2021年4月
マハゼをつりに行こう 第6回
船でハゼ釣り
今まで、ハゼ釣りの入門ということで、川岸や運河沿い、海辺でのハゼ釣りを前提にお話をしてきました。今回は、その発展形である船に乗ってのハゼ釣り(船釣り)について、お話しします。
船に乗ってハゼを釣る理由のひとつは、ハゼのいるポイントに近づきたいということです。ですから、どこで、どんなハゼを釣りたいか?によって、選ぶ船が変わります。
水深が50cmから1m程度の浅場に集まるデキハゼ(当年生まれの小型のハゼ)をねらうのであれば、できるだけ小回りが利いて、喫水(きっすい:水中に沈んでいる深さ)の浅い手こぎボートを用いるボート釣りが最適です。貸しボート屋さんによっては、ポイント近くまで動力船で連れて行ってくれることも有りますので楽ちんです。
ポイントに着いたら、流れに舳先(へさき:船の前の方)を向けて、アンカーを入れて船を固定します。流れや風によってボートはふれ回ることになりますので、近くの船や障害物などにぶつからない様、十分に間をあけることが大切です。また、アンカーを入れることで、ポイントの水深を確認することもできます。アンカーを少し引っ張ると、その感覚で底の状態が砂なのか、どろなのか、障害物はどの程度ありそうかということもわかります。ボート釣りには、そうした海底の様子や潮、天気などに合わせてポイントを探るという楽しみもあります。
港や入江など囲われた場所であれば、こうした小型の手こぎボートでも十分に楽しむことができますが、大型のハゼ(落ちハゼ)をねらうには、運河沿いで、流れに沿ってある程度広い場所を探りながら釣る、練り船(ねりぶね)がおすすめです。船長さんが船を流れに合わせてたくみに操り、運河沿いのポイントを探ります。今は少なくなってしまいましたが、櫓で船を操り、運河をゆったりと流れながらハゼを釣るのは、伝統ある江戸前ハゼ釣りの真骨頂です。中通しの和竿などを使うと、さらに趣があるばかりでなく、落ちハゼのわずかなあたりを感じることができると言います。東京湾で練り船を出してくれる船宿さんは少なくなりましたが、ぜひチャレンジしていただきたい釣り方です。
海に出た落ちハゼをねらう船釣りでは、船も大型になっていき、動力船である遊漁船が使われます。船長さんが、広い海の中から、当日の様子に合わせて釣れるポイントに連れて行ってくれます。遊漁船の多くは、とも(船の後ろ側)にスパンカーと呼ばれるほを上げて潮の流れと風を使って船を安定させています。釣り場に着いたら船長さんからの合図を待ってハゼ釣り開始です。設備のある船では、釣ったハゼをその場であげる「天ぷら船」をしてくれる場合もあります。
最近では、そうした天ぷら船の発展形として、屋形船でハゼ釣りということも行われています。屋形船は大型ものが多いので、入れる運河や海域は限られてしまいますが、多くの船宿さんでは、釣り具なども用意してくれますし、何より、釣り船に乗るときのような重装備は必要ありません。江戸の粋な遊びである屋形船と釣りを合わせた新たな楽しみ方として注目されています。
間もなく今年のハゼ釣りシーズンがやってきます。2020年度の調査結果を見ると、場所によっては、早い時期にヒネハゼが釣れる可能性があるようです。様々な釣り方へもぜひチャレンジしてみてください。ハゼ釣り、楽しんでまいりましょう。
2021年3月
マハゼをつりに行こう 第5回
ハゼの食べ方
今回は、少し視点を変えてハゼ釣りの後のお楽しみである「食べる」ということに注目してみます。釣った魚を自分でさばいて食べるのは格別です。ぜひ、チャレンジしてみてください。
東京湾ハゼ音頭の2番にこんな歌詞があります。「母さんの母さんもいっていた/東京湾にはハゼがいた/からあげ、天ぷら、かんろにと/正月丸干しぞうにたく/ハーゼ・ハゼ・ハゼ・ハーゼ・ハゼ♪」というわけで、ハゼの食べ方あれこれをしょうかいします。
小さなハゼ(7-8cm)は、頭を落としてお腹の内臓をとり出し、からあげにするのが簡単です。①まず、包丁を立ててしっぽから頭に向かってなでるようにうろこをとります。ぬめりが強いときは、あらかじめ塩でもんでおきます。小さなハゼは気になるようなうろこはほとんどついていませんので、省略してもかまいません。②手でハゼの体を固定し、胸びれの後ろから包丁を入れてエラ、頭をはずします。③ハゼをおえていた手の親指で内臓をおし、包丁でかきだし、水洗いして下準備オッケーです。その後は、からあげ粉をつけて、170度くらいで、しっかりあげてください。塩をふって、そのまま食べても、美味しいですが、二度あげすれば骨まで食べられます。
少し大きく(12-15cm)なってくると、開いて天ぷらにできます。同様に、①うろこを落とし、②エラ・頭を外します。③内臓を取り出し水洗い、④背の方から骨に沿って切り開き、➄背骨を外して、残った小骨を取ったら下準備オッケーです。あとは、天ぷら粉をつけてあげます。
この他に、小さめのハゼについては、内臓を外した状態で、かんろに(甘露煮)にするのも良いでしょう。ちょっと前までは、東京駅で売っている深川めしにハゼのかんろにが入っていたこともあります。ハゼならではのしっかりとした味わいがありました。
もっと大きなハゼ(18cm以上)であれば、おろしてさしみで食べることもあるようですが、大きいハゼでは、丸干し(焼き干し)にチャレンジしてみるのも良いでしょう。①竹串を使って肛門から内臓を引き出し、②串を口から通して、③遠火でしっかり焼きます。④串を外して一日置いて身をしめて、⑤ワラでハゼを編んで10日ほど干せば完成です。関東や東北では、この焼き干しでだしを取ったぞうにを食べたという人も多いのではないでしょうか。
色々なマハゼの食べ方にチャレンジしてみてください。
2020年12月
マハゼをつりに行こう 第4回
初心者のハゼ釣り教室(釣り場の探し方)
「ハゼは足で釣る」と言われるほど、場所探しが大切です。良い釣り場(ポイント)を探すにはハゼの性質と、海底の様子と水の流れの関係について知っておくことが大切です。
ハゼは腹びれで海底に張り付き、砂の中のゴカイや、海底近くにある藻や小エビ、小魚などを食べています。場合によっては、岩のかげなど身をかくす場所にいて、落ちてきたエサを待っています。小さいうちは、浅場で活発に移動し食い気も旺盛ですが、大きくなると、深場に移動し、あまり活発に動かなくなるという性質があります。
ですから、小さなハゼがいる所としては、浅い砂地であること、豊富なエサが食べられること(流れがとどまる所)などが考えられます。一方、大きなハゼがいる所は、深くて潮通しが良いところ(流れのある所)、巣穴をほることのできるどろ混じりの海底などが考えられます。最近では、ブロックのスキマ(いわゆる穴釣り)などもポイントとなっています。
昔から、釣り人(漁師さん)たちは海底の様子をあらわす様々な言葉を使ってきました。(1)あさっぱ・すなんち、(2)ふかんど、(3)かけあがり、(4)あな、(5)やま、(6)よこあな、(7)しずどこ・かかりなどです。こうした地形は、水が砂やどろをけずり運ぶことでできますので、川の曲がりや海岸線の形からも、水の流れの様子や海底の地形を推測することができます。
(1)あさっぱ・すなんち(浅場、砂地):砂やどろがたまり浅くなっているところ。小型のハゼ(デキハゼ)の狙いところです。潮が引いている時に干上がるくらいの浅場でも、おどろくほどハゼが集まっていることがあります。水がすんでいれば、見釣りを楽しむこともできます。岸のそば、川の曲がりの内側にあります。
(2)ふかんど(深んど):深くなっているところ。潮通しが良ければ砂地に、流れがよどんでいればどろ混じりになります。大型のハゼの狙いところですが、海底がドロドロのヘドロ状(ネタ)では、あまり良くありません。沖の方、川の曲がりの外側にあります。
(3)かけあがり(かけ上がり):底の凸凹の深いところと浅いところをつなぐ坂道です。沖から岸に向けてできているゆるやかなかけ上がりは、様々な大きさのハゼのより所ですので、ちがう深さをていねいに探してみると良いです。また、後で出てくる「あな」や「やま」のへりにある小さなかけ上がりも大切なポイントです。急に深くなるところは「けた」と呼ばれることもあります。
(4)あな(穴):海底にできた数十cmのへこみです。ハゼがエサを探したり、休んだりしていることがあります。川では、急に川はばが広がるところなどに大きなあな(淵:ふち)が出来ていることがあります。そのへりは、かけ上がりのポイントです。
(5)やま(山):海底にできたでっぱりです。潮の流れに沿って広がったり、海底の障害物を中心に砂が集まってできたりします。海で大きく山ができると、州と呼ばれます。
(6)よこあな(横穴・横孔):川の石積みのていぼうやがけ状の海岸などにあるすき間で、見つけにくいですが、大物が潜んでいる可能性があります。最近では、ブロックやテトラポッドなど人工構造物がこうした横穴となっている場合があり、新たなポイントとして着目されています。
(7)しずどこ・かかり(沈床・障害物):海底にしずんでいる障害物です。その下やすき間にハゼがかくれている可能性がありますので、しかけをひっかけないように、ていねいに探ると良いです。例えば、砂地にカキガラが広がるような海底は、しずどことよこあなの特ちょうを持った、とても良いポイントになります。
このように様々な角度から、海底の様子を想像して釣り場を探してみてください。思った通りにハゼが釣れたら楽しさ倍増です。くれぐれも、安全第一に、すべらないクツをはいて、水際に寄るときにはライフジャケットを忘れずに!
次回は、釣ったハゼの食べ方についてです。
2020年9月
マハゼをつりに行こう 第3回
初心者のハゼ釣り教室(釣り方編)
事前の準備と道具を持ったら、いよいよハゼ釣りです。今回はエサを使う釣り方を説明します。釣り方は、大きく分けて3通りあります。みゃく釣り、ウキ釣り、ぶっこみ釣りです。それぞれ仕掛けがちがいますが、ハリにエサをつけて海底付近にしずめ「さそい」、ハゼがエサをくわえた「魚信」をとらえて、糸を引いてハリをハゼのあごにかける「あわせ」をすることでハゼを釣るのです。
なお、ハリは釣りをする時期のハゼの大きさに合わせて大きさを変えます。ハリの大きさは「号」で表します。号数が小さい方が小さなハリです。春・初夏の生まれたてのハゼ(デキハゼ)は、2号から4号、10cm前後の夏ハゼなら5号から7号、15 cmをこえる秋の落ちハゼには7号から9号などの大きなハリを使います。松島では30cm級のハゼを釣るために13号などの大きなハリをつかうこともあります。
エサは、ゴカイやイソメなどが食いが良いと言われていますが、最近では、手に入りやすいエビやホタテを使う人も増えてきています。いずれも、ハリの先をすこし出すように、つけるのがコツです。
それでは、釣り方別に、代表的なしかけと、釣り方を説明していきましょう。
みゃく釣りのしかけは、大きく分けると、「中通し」という、おもりの下にハリをつけるものと、「胴付き」という、おもりの上にハリをつけるものがあります。どちらも、エサが自然に上下にうごくように竿をあやつり「さそい」ます。そうすると、ハゼがエサに食いつき、体を反転させて引っ張るときに、竿に「ブルブルッ」と「魚信」が伝わってきますので、そこで軽く竿をあげるように「あわせ」をするとハリがハゼのあごにかかります。
ウキ釣りのしかけは、軽いおもりと小さめのウキをセットで使います。おもりとウキの間の長さを釣り場の水深にうまく合わせておくことが大切です。ウキ釣りの時には、しかけを投げ入れてエサが落ちていくときや、エサが海底で動いたり、流れで動かされたりすることが「さそい」となります。「魚信」は水面にあるウキが水の中に引きこまれまることでわかります。そこですかさず「あわせ」ることで、釣り上げることができます。
ぶっこみ釣りのしかけは、天秤を使うことが多いです。天秤はおもりを支点にして、うでの部分がハリをふりまわし「さそい」をしてくれます。この部分が、小型のみゃく釣りしかけになっているのです。ハゼがハリを引っ張ると天秤の作用で「あわせ」がされるので、自分であわせをする必要はありません。「魚信」はかかったハゼが動き回ることで、竿先が大きく引っ張られる形で伝わってきます。それを見たらしかけをまきとるだけです。
いずれの釣り方も面白く、簡単です。「さそい」「魚信」「あわせ」をマスターすれば、みなさんもハゼ釣り名人の仲間入りです。ぜひ、いろいろチャレンジして、自分の好きなスタイルを見つけてください。
次回は、釣り場の探し方です。
2020年7月
マハゼをつりに行こう 第2回
初心者のハゼ釣り教室(準備編)
ハゼ釣りは、手軽さです。「さお」と「しかけ」と「エサ」、「バケツ」を持ったら準備OKです。でもちょっと待ってください。準備で大切なのは、事前の情報収集です。そして、ハゼ釣りに最適な身だしなみを整えること。それが揃ったら、道具を持って釣り場にGOです。それでは、順番に見ていきましょう。
まずは、事前の情報収集。なにやら大げさに聞こえるかもしれませんが、簡単なことです。まずは天気、そして潮位、さらには釣り場の情報を集めるのです。
釣りには、晴れが良いとされています。その中でも、おだやかな北風がふくのが最高です。前日や当日の朝に最新の天気予報をチェックしましょう。前の日に雨が降っていると、川や海がにごったり、ハゼがいつもの場所から移動してしまっていたりして、良い釣りにならないこともあります。
釣り場に行ったら、自分の五感をフルに使って天気を感じ取ってください。風が止まるナギや、急に冷たいコチ(東風)が吹いてきたら、天気が変わるサインです。特に、川では、上流側の地域での雨などにより急な増水が起こることもありますから、常に水や空の様子に変化がないか気を配ることが大切です。
潮位というのは、潮の満ち引きによる水面の上がり下がりです。日に2回、上げ潮-満潮-下げ潮-干潮がくり返されます。月に2回、満潮と干潮の差が大きくなる大潮があり、上げ潮の始めが良く釣れると言われています。
潮位を確認するためには、潮位表を見ることが確実ですが、月の満ち欠けや太陽の位置などを参考に計算することもできます。さらに、釣り場で、岸の濡れ方や、フジツボやカキなどのくっついている高さ、水位の変化からも推測することができます。
釣り場の情報は、釣り雑誌やSNSなどで最新の情報を得ることができますが、トイレや水場の場所、高潮や津波の時に避難できそうな高台や建物の位置、水際の様子(すべるかどうか)などを確認しておきましょう。簡単なのは、その場所を良く知っている人に教えてもらうことです。例えば、その場所に来ている人に、きちんと挨拶して、いろいろ教えてもらうのも良いことです。もしかすると、秘伝の釣り方を教えてもらえるかもしれませんよ。
次に、身だしなみです。運動ぐつとくつ下、できれば長袖、長ズボン、ぼうしに手ぶくろ(軍手)、そしてライフジャケットが良いでしょう。安全に釣りをするための装備だと考えてください。今年は、新型コロナウィルスの感染拡大防止のために、行き帰りにはマスクをすることも忘れずに。釣り場では、人と近づかないようにしていれば、熱中症予防のためにもマスクは外しても良いです。飲み水なども忘れずに!
さて、準備ができたので道具を持って出かけましょう。今回は、シンプルな「のべ竿」による「みゃく釣りしかけ」を説明します。竿は、長さ2〜3 mぐらいの「のべ竿」とよばれるリールなどが付いていないもの。しかけは、1–2号の道糸を竿の長さより少しだけ短めにつけ、その先に、1–2号のおもりと5–6号のハリをつければ完成です。エサは、ゴカイやイソメ、ボイルホタテ、小エビなども良いようです。小さめのバケツに紐をつけて水汲みができるようにしておきましょう。バケツは、釣った魚を入れるだけでなく、行き帰りの道具箱にもなりますから便利です。
次回は、いよいよ釣り方編です。
2020年6月
マハゼをつりに行こう 第1回
ハゼつりのみ力とマハゼの棲み処調査
「釣」という漢字は、金属の針すなわち「つりばり」をあらわす「かねへん」と、ものをすくいあげた「ひしゃく」をあらわす「勺」のつくりからできていて、つりばりで魚をつりあげる様子をあらわしています。
そんな「釣り」の道具にはさまざまな工夫がされています。例えば、竿は魚が餌を食べたことしるし(あたりと言う)を敏感に感じ取るために、先が細くなっています。つりあげると言っても、釣り糸で強引に引っ張るのではなく、竿のしなりで魚をいなしながら引き寄せてくるのです。ハゼ釣りでは、2〜3mくらいの竿と簡単なしかけがあれば、だれでも簡単に楽しむことができます。
『ブルンブルンと竿先をゆすぶる・・・一寸お臍をつゝかれたようである。水を切ってあがった沙魚。大きな口を真一文字に結んで、どんぐり眼で何を睨むか。』これは、60年前に書かれた「はぜ、ボラ釣」という本に書いてあるマハゼつりの様子です。直ぐにでも釣りに行きたくなりますね。
なお、マハゼは、おいしい魚で、からあげや甘露煮、天ぷらやおさしみ、丸干しにして正月の「おぞうに」のだしを取ります。天ぷらのホクホクした身は味もしっかりしていて、ほっぺたが落ちそうです(食べ方については、このページで改めてしょうかいします)。
そんなマハゼが、最近減ってきています。昔は30cm近い2才魚が居ましたが、今は、20cmをこえない1才魚ばかりです。どうしてこうなったのか、どうしたら前のように大きなハゼをたくさん釣ることができるのかについて考えるために、「マハゼの棲み処調査」が行われています。
マハゼを守り育てるためには、マハゼがどこで、どんな生活をしているのかを知らなければなりません。あちこちのマハゼの体の大きさを正確に測ることで、マハゼの成長や行動を推理できます。できるだけ多くのハゼの大きさのデータを集めることが大切です。調査は釣ったマハゼの大きさを定規で測って、データをFAXで送ったり、ネットから入力したりするだけの簡単なものです。みなさんも、ぜひマハゼつりをしてマハゼを守り育てる取り組みに参加して下さい。